「子どもたちの声を受け取る機会を増やしたい」と、吹田市は今年度から、市内54の小中学校の児童・生徒約3万人に配備した学習用端末に、いじめ防止相談ツール「マモレポ」を導入した。GIGAスクール構想が進む中で、児童・生徒に1人1台の学習用端末(吹田市では小学生にはiPad、中学生にはWindows)が貸与されることを活用し、子どもたちのヘルプサイン(いじめなどで困っていること)をいち早く知って早期の対応につなげたい意向だ。
「マモレポ」は、「マモル」(東京都新宿区・隈有子代表)が運営するいじめ防止相談ツール。学校の内外で子どもが体験したいじめ、見聞きして誰かに相談したいこと、悩みなどを、学校や教育委員会に直接送信できるツールで、匿名で送ることもできる。他県では、学校単体での導入例などはあるが、GIGAスクール構想と絡めた自治体としての導入は吹田市が全国で初めてという。
トップ画面の「マモレポ」のアイコンをクリックし、IDとパスワードを入力すれば次に「相談したいとき」「読んでみよう」の画面に移動。相談のメニューは「あなたの学校に相談」「あなたの相談の記録」「教育委員会に相談」を用意。「読んでみよう」には各学校のいじめ予防授業で使われているテキストと同じ読み物が用意され、何かに気づいた時に自主的に動くこと、信頼できる大人に伝える大切さなどの学びをサポートする。
相談するときは「どうしましたか?」「何がおきましたか?」「場所はどこですか?」などの質問に、低学年でも使いやすいよう「言葉の暴力」「ネットで悪口」「仲間外れ」などの選択肢がイラスト入りで表示されている。相談内容は相談先が日々チェックし、対応するようにする。
市教育委員会の担当者は「わかりやすくていいシステムだと考えている。忙しい先生方にもプロセスを踏んで説明し、保護者にも導入案内のプリントを3月に配布した。使い始めたばかりなので相談自体はまだ数件しか来ていないが、学習用端末を家に持ち帰って宿題などをするようになれば、相談も増えるのではないか」と期待を寄せている。
「すいたGRE・ENスクールプロジェクト」の一環として
この取り組みは、昨年度から吹田市でスタートしたいじめのない学校づくりの実現を目標とする「すいたGRE・EN(グリーン)スクールプロジェクト」の一環。プロジェクトには「マモレポ」導入やいじめ予防授業のほか、いじめ対応支援員やスターター(支援員)の増員、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置時間増などが含まれ、市全体で取り組んでいくという。背景には、過去にあった大きないじめに学校が長く気づけないままでいた状況があった。プロジェクトは2019年6月に「いじめに係る重大事態調査委員会」がまとめた調査報告書を踏まえて実施を決めた。GRE・ENの「G」はgood(良い)、「RE」はrelation(関係・間柄)、「EN」enjoyment(楽しみ・喜び)の頭文字で、学校生活で子どもたちが友達や先生、地域住民と良い関係を築き、楽しみや喜びを感じながら過ごせる環境を整えることを目指す。